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正直にいって、この人物が俺に対してどういった事を告げたいのかが判らない。
この後も直ぐに仕入れの旅に出ると、多忙な筈だろうに、こうやって綿密に思える程の言葉を交わすのは、やはり俺がする事になる役割について、相互理解とやらを深めておく必要があるからだろうか。
『それで、私が……俺がしたきたことは、この影武者班に、貴方の、この国の最高峰の仕立屋の影武者として勤めれば、問題視はされないという事ですか?』
『そうですね。けれども君は、私が国最高峰の仕立屋でもありますが、国王陛下の直轄の諜報部隊の隊長の副官であるのも御存じですよね?』
改めてにっこりと上品としか呼べないような圧力を伴って、黄金色の眼を細める。
『もしかして、それを知った事が、国王陛下の逆鱗に触れたという事ですか?』
『ふふふ、質問に質問に返すの礼儀を欠いていますよ……安心してください。
確かに、貴方が度胸か実力を試したいからかまでは判りませんが、国の中枢にまで魔法鏡で覗き込んだ事に関しては、よろしくないと思ってはおいでです。
けれども、無駄に命まで取るという事はしませんから。
それに国王陛下に、私の上司にあたる方は個人的にシュピィギー君の才能に非常に興味をもっているようですよ』
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