新しい共犯者

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”あなたへの手紙も何十通めかしら 今日、例の計画の共犯者をスカウトしたわよ それから、カードも書きはじめたの 全部で何枚になるかは未定だから、その辺は本当にサプライズになるわね 楽しみにしてて? でも最後の一枚は、予定通りの内容を書いて、あの子が読めるように封も開 けたままにしておくから 私達の計画通りなら、あの子はそれを覗き見して それから私を裏切って、最後のカードは渡さないはずだけど…… うまくいくかしら? もしうまくいったら、あなたは時々カードを催促しなきゃだめよ? じゃないと疑われるかもしれないから だけど催促し過ぎもだめ あの子を追いつめかねないから 程よい感じで見守ってやってね? でも、あなたも私の共犯者だと知ったら、あの子驚くわね 最後のカードをあなたに渡さない、までが私の計画だなんて、考えつかない でしょうし 私の病気を知った時のあの子の顔、覚えてる? 元気を装っていても、傷付いてたわ なるべくなら、あんな顔はもう見たくない ま、私は死んでるから見ずにすむんだけどね でもとにかくそういうわけだから あの子の気が少しでも紛れるように、宝探しをうまくリードしてよね あの子には、もうお父さんしかいないんだから…… あ、この手紙はあの子に見つからない所にしまっておいてね 絶対に読ませちゃだめよ? それじゃ、気が向いたらまた手紙書いておくわね あの子のこと、くれぐれも頼んだわよ” 「また読んでるの?」 降ってきた声に、反射的に顔を上げる。 すると風呂上がりの彼女に笑われてしまい、俺は慌てて手紙をしまった。 「ああ、いや、別に……。それよりさ、」 話を逸らそうと視線を彷徨わせると、ふとを見つける。 「…なあ、そっちの手紙には何て書いてあったんだ?」 隣に座ってきた彼女の手にも、同じ封筒。 彼女はクスクス笑いながら言った。 「それは秘密」 その雰囲気が、何となく母に似てるような似てないような… 俺って、結構お母さんっ子だったのかな。 そう思うと、胸がくすぐったい。 「ちょっとだけ教えてよ」 彼女の正面に向き直って、もう一度頼んでみる。 「だめ。これは、お義母さんと私の秘密」 そう言うと、彼女は母の手紙をそっと抱きしめた。 そんな様子に、拒否されたくせに、密かに喜んでる俺がいた。 大切そうに手紙を扱ってくれる彼女を見つめる俺は、どこまでも温かな表情である自信がある。 ―――母さん、今日、また新しい共犯者ができたみたいだよ。    どうやら、今度の共犯者は、俺や父と違って、    母さんを裏切ることはなさそうだ……… (完)
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