20人が本棚に入れています
本棚に追加
母が死んでから、もうすぐ二度目のクリスマスが来る。
先月は初めての命日を迎え、俺はその日の朝、96通目のカードを父のクローゼットに隠し、父はその夜、それを発見した。
てっきり100通ほどだと思っていた母のカードは、最終的には137通にまで増えていた。
母は、命ギリギリまでカードを書き続けていたようで、最後のカードには数字の代わりに”Last”と記されていた。
思うに、母は最期のカードを前以て書いてあって、可能な限り書き増やすつもりだったのだろう。
その証拠になるか分からないが、最後のカードにだけは封がされていなかったのだ。
そうなると、やはり中身が気になってしまうのは、やむを得ないだろう。
俺はしばらく躊躇する日々を過ごした後、最後のカードだけ、覗いてしまったのだった。
” これが最後のメッセージです
ここまで来たら、いくらあなたでももういい加減元気になってるわよね?
だから私が最後に伝えたい事を遠慮なく書いておきます
もし、この先素敵な人にめぐり逢えたら
私の事を言い訳にしないでちゃんと幸せになってね
例え恋愛じゃなかったとしても
一緒に過ごして心地いい人を見つけたら
絶対手放しちゃだめよ
子供はそのうち出ていくんだから
その時あなたが一人で寂しくしてるんじゃないかと
それが心配なの
だから、私の思い出は胸に
新しい出会いを大切にして
長生きしてください
私もあっちでイケメンと出会ったら付き合うかもしれないしね
それじゃ、元気でね
早死にしちゃだめよ
あ、約束通り、クリスマスには必ずケーキを供えてよね ”
小さな二つ折りのカードに、細かな文字でいっぱいに書かれていた。
最初のコメントを投稿しよう!