小夜子の酒

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「あれじゃない?そういうの似合うのってハンフリー・ボガートとか昔のいい男の夢女子してるからじゃない?」 「ですよねー」 「学生時代はアニメの美形主人公に夢見てたしさ、吉野家は」 「ノンノン主人公。あたしは二番手のクールキャラ好みでしたよ」 「そうだっけ?」  退勤後、たまたまタイミングを合わせて寄ったファミレスのドリンクバー。  小夜子は笑顔を作りながら、れんちゃんの肘の内側をどついた。  奴には悪いが八つ当たりだ。  びーんと腕がしびれて悶絶するれんちゃんの顔は、かっこよくもセクシーでもない。 だけど愛嬌があり、小夜子はそれを見ると安心する。 思えば大学卒業してから何年も経つんだね。 「俺らちっとも進歩してなくね? 」 「そこ、無理やり仲間に引き入れない! あたしはちょっとずつ成長していると思いたいね」 「成長じゃなく老化じゃねえの? お互い夜遊びの疲れが取れない年齢になって来たよなあ」 あんたと2人で夜通しご一緒したをことなんてないけどね。 「老化……」 小夜子は図星を突かれたショックを、れんちゃんを罵る事で相殺しようと試みた。
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