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小夜子は少し考えて、ベッドに腰掛けた。
ストッキングを脱いだ生足が、スカートの下ですーすーする。
決心して、客室電話をかけた。お隣だから部屋の番号は分かっている。
マツヤさんはすぐに出た。
「はい」
「ヨシノヤです」
「どうしました。もうお休みではないのですか」
「いいえ、まだです。あのう、そちらのお部屋に行ってもいいですか?」
「駄目です」
「え」
小夜子は思わず受話器を握りしめた。
「それは良くありません。あなたのようなお嬢さんが男の部屋に来るようなことは、いけません」
何を言ってるんだこの人は。一緒に行きましょうと言っておいて、ホテルには娘と言ったり。
自分だけいい人で居ようったって、そうはさせない。
「じゃそちらからいらしてください。私はマツヤさんが好きです」
テレビの音を最小限にして、小夜子は耳を澄ませた。
隣の部屋のドアが開く音。そして部屋のベルが鳴り、マツヤさんが姿を見せた。
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