カエレナイフタリ

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 湯船から上がり、いったん脱ぎ捨てた浴衣を引っかけてカーテンを細く開ける。  窓の外は野毛のビル街で、その間を行き交う京急線と、朝日を反射する大岡川の水面がちょっぴり見えるだけだ。  あとは似たようなビル、ビル。  職場や資料館、大桟橋では近くに見えた横浜の三つの塔の姿は全くない。  昨夜、マツヤさんの指で胸に書いて教えてもらった、横浜三塔。  神奈川県庁本庁舎がキングの塔、優美な白い横浜税関がクイーンの塔、赤茶色のデコラティブな横浜市開港記念館が、ジャックの塔。  乳首、谷間、ふっくらした乳房と、マツヤさんは小夜子の体を押して、吸って、なぞって位置を教えてくれた。  男の人の指先って、固くてごつごつしているんだ、と小夜子はふるえながら感じた。 「これに神奈川県立歴史博物館、通称歴博のドームを加えて、四塔と言う事もあるんですよ」  鎖骨の下を強く吸って赤い痕をつけながら、マツヤ先生はゆっくりと小夜子の体を開き、一気に奥深くに入ってきた。
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