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たまくすの庭
今日も潮が薫る。
吉野家小夜子の勤める図書館から徒歩10分の海岸通りの交差点には、港湾都市・横浜の歴史を展示する資料館が建っている。
幕末、日米修好条約の後諸外国との交易を始めた横浜という地が、外国船の船着き場として開港し、外国使節を迎え入れたその場所に立つ石造りの建物。
元々はイギリス領事官だったという古い歴史を持つそこは、一際太く真っ直ぐな歴史に貫かれた土地だ。
『ジャック』と呼ばれる威厳ある塔を持つ県庁旧庁舎の、大通りを挟んだお向かい。くすんだ青灰色の石造りの洋館に、薩摩と横浜を舞台とした戊辰戦争の遺物から幕府時代の地図、西洋人を描いたスケッチ、当時の外国人記者による横浜の風物や風刺画。その他絵画や文書やマイクロフィルムなど展示物があまた収蔵されている、その静かな資料館が小夜子は大好きだ。
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