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「嫌、ですか?」と問われて、彼女は彼を見つめ返している。
ちょっと怖いくらいの真顔で見られて、鼓動が早くなった。コーヒーの味が良くわからない。耳まで赤くなっていくのを感じて、彼女の手が止まる。
「嫌……じゃないよ」
しばらく黙った後で、ようやく口にした。彼が満足そうに笑う。
「もっと、影響受けてください。僕の」
「……」
何も言い返せなくて、悔し紛れに彼を睨むように見ると、彼女は黙ってコーヒーを飲み干した。
「……コーヒー以外なら、いいわよ」
やっぱりどうしても、ポーションのミルクは好きになれない。顔をしかめながら彼女が言うと、彼はその表情を見てクスクスと笑っている。
「からかわないでよ……意地悪」
「どっちが意地悪ですか……あんな依頼してきて」
彼女が彼を試した事を言っているのだ。
まあ、それについては色々と思惑があったのだけど。だけど、絶対に――白状する気なんかない。
そんな気持ちを隠しながら、
彼女は彼を笑顔で見つめ――お代わりのコーヒーをもらうために片手をあげた。
――FIN――
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