2019年度、秋:美衣子せんせい、挑む!

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2019年度、秋:美衣子せんせい、挑む!

 「ごちそうさん」  「毎度どうもー」  トリ目族にて。  大将の元気な声に送られて、のんちゃんパパとリュウくんパパが席を立った。  『大将&藤堂さん カップル疑惑騒動』の影響を受けていない、至って平和な夏を過ごした人たちである。  「この時間でも外は蒸し暑いですねぇ」  リュウくんパパが禿頭を拭う。  9月初旬。夜とはいえ、屋外はサウナのようだ。  のんちゃんのパパは、ハンカチで丁寧にメガネを拭いた。  冷房の効いた店から出ると、すぐに曇る。この時期のメガネ族は大変だ。  パパがメガネを掛け直した時だった。  「おや?」  10メートルほど先を、黒い影が横切った。  リュウくんのパパも、「何だ」と目を(しばた)かせる。しかし、それよりも気になる話題があるようで、  「そういえば、もうエントリーはお済みですか?」  と不敵な笑みを浮かべた。  「もちろんです!」  「優勝目指して頑張りましょう!」  「はい! その暁にはトリ目族で勝利の美酒を!」  凸凹のオヤジコンビは、ガッチリと握手を交わした。若干の手汗は気にしない。  運動会は来月だ。のんちゃんたちも、幼稚園で練習が始まるはずである。パパたちは、最後の保護者リレーに闘志を燃やしているのであった。
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