2019年度、秋:美衣子せんせい、挑む!

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 ♢  (やってしまったわ……)  翌日。後悔の念に駆られる美衣子せんせいである。  昨夜、温泉施設で汗を流した美衣子せんせいは、風呂上がりにビールを飲んでしまったのだ。おつまみに、どて煮やイカリングまで頼んでしまった。  (サービスが充実しすぎなのよ!)  たくさんのアップリケをつけたクリーム色のエプロンを軽く叩く。この腹に、ビールやどて煮をおさめてしまったのだ。何てことだ!  「美衣子せんせい、タヌキさんみたーい」  ユウちゃんが言った。  「ふふふふ、タヌキさんのまねっこだよ〜」  落ち着け。ユウちゃんは、お腹を叩く仕草のことを言ったの!  必死で自分を宥める美衣子せんせいである。  (おすもうさんとか言われなくて良かったじゃない。まだ望みはある!)  麗香せんせいがお休みの今日、彼女はヘルプで“ひまわりぐみ”に入っていた。  「さあ、みんな並んだかな? 今からお外に行きまーす」  年長さんは、これから園庭で遊ぶ時間だ。二学期に入っても真夏日が続く。外へ出る時間は短めに設定している。  「鬼ごっこする人〜っ?」  のんちゃんが、空に向かって小さな指を伸ばした。  何人かが楽しそうに寄ってくる。もちろん、ミホせんせいも参加だ。  何を思ったか、美衣子せんせいも手を上げた。  「よぉし! せんせいも、たまには鬼ごっこ入れてもらおうかな!」  昨晩のビールとどて煮を、鬼ごっこで解消するつもりである。    
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