2019年度、秋:美衣子せんせい、挑む!

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 子どもたちがわぁっと飛び跳ねた。普段とちょっと違ったことがあるだけで、嬉しくなってしまうのである。  こすもすぐみの朱里せんせいと、ちゅーりっぷぐみ副担任の鈴乃せんせいが意外そうに顔を見合わせた。  朱里せんせいは困惑と心配の表情でこちらを窺ってくる。新人の鈴乃せんせいは、それよりはちょっと遠慮がちな視線だ。  (え、そんなに心配される!?)  ショックを受ける美衣子せんせいである。  「じゃあ、鬼はミホせんせいがやろうかなー」  微妙な雰囲気に気づいていないミホせんせいが腕を大きく広げると、子どもたちが「きゃぁっ」とはしゃぎながら逃げていく。  それに乗じて、美衣子せんせいは朱里せんせいたちの視線を振り切った。軽く走ってみると、そんなに苦ではない。  走り込みの成果が出てる(昨日が初日)!  やっぱり運動って大切!  美衣子せんせいは、園庭の空気を思い切り吸い込んだ。  (……キツい)  鬼ごっこも終盤である。  何がキツいって、キツくないフリをするのがキツい。  「美衣子せんせい、タッチ!」  のんちゃんに捕まった。さほど手加減したつもりはないのに、あっという間に追いつかれた。子どものパワーに舌を巻く。  「わぁー。のんちゃん、足速いなぁ。追いつかれちゃったね」  息が上がってないフリをするのも一苦労だ。  のんちゃんとミホせんせいが横並びで走っていく。  (生まれ持ったHPが違いすぎる──)  そうとしか思えない美衣子せんせいであった。
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