2019年度、秋:美衣子せんせい、挑む!

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 ♢  その夜。  美衣子せんせいの姿は、あるダンススタジオにあった。  幼稚園関係者に会わないよう、わざわざ隣町のダンスクラブを選んだ。今日は体験会だ。オシャレなスタジオは気分がアガる。もちろん空調も効くから快適だ。  (運動は楽しく続けなきゃね!)  昨日のビールとどて煮は鬼ごっこで消費した(気分)。気持ちも新たな美衣子せんせいである。  しかし、彼女は知らない。後輩たちの噂の的になっていたことを。  ──美衣子せんせい、午後すごく疲れてたわよね。  ──ええ。顔つきが全然違ったわ。  ──何で鬼ごっこする気になったのかしら。  キツくないフリなど、できていなかったのである。  それはさておき。美衣子せんせいは、ロッカールームに入ると被っていたキャップを外した。受付で渡された鍵と同じ番号のロッカーを探し当てる。  「ミーコ?」  隣から声をかけられた。こちらを窺うショートカットの女性が目を輝かせる。  「やっぱりミーコじゃん、超久しぶり!」  「志織!? こんな所で会えるなんて!」  志織は高校時代の友人だ。この町の保育園に勤めている。思いがけない再会に、美衣子せんせいのテンションも上がった。  「なに、ミーコもダンス始めるの?」  「うーん、まだお試しなんだけどね」  「私も。ダンスなんて自信ないし。でもミーコが一緒なら続けようかな!」  「私も心強いよ、志織!」  二人は、ガッチリと手を取り合った。  幼稚園関係者じゃない知り合いがいてくれて良かった。何だかツイてる!
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