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星間物質がとてつもない速さでかすめていく。
太陽の眩しさは虚空にあって神秘的な色合いを醸し出していた。
地球のあちこちから、青く輝くオーラに包まれた人々が飛び出していくのが見える。
リョウと同じ能力の持ち主達だろう。
年齢や人種は様々で、褐色の肌の者、全身タトゥーの大柄な男、遊び人風の中年や幼い子供の姿もあった。
皆この世界ではうまく生きられない、はみ出し者だ。
本当の居場所を求めて逃げ出していく。
放射状に広がる幾百幾千もの軌跡は、地球をもう一つの太陽に見せていた。
みんな垂直に伸びていくから、互いに交わる事はない。近くを飛ぶ少女も、いずれは遠ざかっていく。
声は聞こえないが、かわす笑みで思いは伝わる。
同じ年頃のその少女は、リョウに地球を指差して見せた。
ーーほら、もうすぐ見えなくなるよ…
そう言っているのだろう。
最後の別れを告げる時が来た。
「朝ご飯おいしかったよ、お母さん。…ありがとう」
クリスタル・エレベーターは飛翔を続ける。
新天地、あるいは帰還すべき原風景を目指して。
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