宵闇と蜂蜜

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カチコチと、時計が時を刻みながら鳴く。振り子が揺れる音がする。 張り詰めたようで何処か柔らかな宵闇が窓枠から染み込んで、そのまま部屋を飲み込んで、静寂で満たす。 大時計の文字盤には、アンティークの小さな硝子細工のお姫様が、金銀の砂子が濃藍に舞い散る世界で、そっと三日月に腰かけている。ふわりと揺れたように、靡いたまま止まっている向日葵色のそのドレスの裾が、閉じられた窓のブラインドから差し込む星々の灯りに踊っている。 小さな白いお顔には、小さな蕾の如き紅い唇と、桃色に染まった頬、そして、長い睫毛が影を落とす大きな瞳。その双眸は、海の様に青くて、月夜の様に蒼い。 星屑の様に夜の色を煌めかせたその瞳が、語る。 愛しい人に、逢いたいと。 ただ、只管に、見つめ合いたいと。 じっと、三日月に腰かけたまま、ただ、その時を待っている。
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