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 日曜日の昼、悠木はマリに古典を教える為、マリの家へと行く。相変わらず高いテンションでマリに出迎えられると、部屋へと案内された。中に入ると、意外にも女の子らしいマリの部屋に、悠木は少し感心をしてしまう。 「へぇー・・・意外。もっとご当地物が沢山飾って有るかと思ったけど、普通に女の子の部屋だ。」  キョロキョロと部屋の中を見渡す悠木に、マリは口元を少し引き攣らせながらも言った。 「それどう言う意味~?つ~か、人の部屋を物色しない!何かエロいぞ!はいはいっ!座った座ったぁ~!」  マリは部屋の真ん中に置いて有る、背の低い丸い机をパンパンと叩く。悠木はマリに促され、机の前へと行くと、床に座り込んだ。  「エロいって何だよ。」ブツブツ文句を言う悠木を余所に、マリは机の上に古典の教科書と、答案用紙を広げる。早速勉強会を始め様とし、悠木はマリの答案用紙を見ると、「ぷっ!」と思わず噴き出してしまった。 「ちょっ!笑うなぁ~!これでも精一杯頑張って取った点数なんだから~!」  頬を膨らませ、恥ずかしそうに怒るマリだったが、悠木はケラケラと笑い出してしまう。 「いやお前っ!だからって8点は無いだろ!これは酷いを通り越して、ネタだぞ?」  余りのマリの点数の悪さに、悠木は呆れる事も忘れ、大笑いをした。マリは顔を真っ赤にさせると、更に頬を膨らませて怒る。 「だから教えてって言ったんじゃんかぁ~!悠木が教えてくれなかったせいだよ!悠木のせいでも有るんだからねぇ~!」 「はぁ?人のせいにすんなよ。勉強してなかった、お前が悪い!」  悠木にハッキリと言われてしまい、マリはションボリと顔を俯けてしまう。 「ま、とにかく始めよーぜ。時間勿体無いし。」  マリはハッと顔を上げ、申し訳なさそうに頭を掻くと、軽く頭を下げて見せた。 「あぁ・・・そっか。午後から穹君とコンサートだっけ?ごめんね~。私が土曜日予定有ったせいで、何かパッツンパッツンな日曜にさせちゃって。」 「別にいいって。俺も土曜は一人で色々考えたかったし、丁度良かったから・・・。」  そう言いながら、顔を曇らせる悠木を、マリは不思議そうに見つめた。  「何か・・・有った?」心配そうにマリが聞くも、「何でも無い。」と、悠木は教科書をペラペラと捲り始める。  悠木に教えて貰いながら、黙々と勉強を進めていると、時折悠木の溜息が聞こえて来た。ふと悠木の方を見ると、どこか遠い目をし、物思いに耽っている様子だ。マリは首を傾げると、不思議そうに悠木に尋ねる。 「何?何か悩み事~?」  マリの問い掛けに、悠木はハッとすると「別に。」と、慌てた様子で教科書を見た。  明らかにいつもと態度が違う悠木に、マリは不審に思うと、放課後穹と二人だけで、話をしに行った事を思い出す。 「もしかして、穹君と喧嘩でもしたとかぁ~?」  ニヤリと笑い、カラカウ様に言うと、悠木は焦り始めてしまう。 「そっそんなんじゃねーよ!喧嘩してたら、今日一緒に歌劇見に行ったりしねーし!」  図星か・・・。と思ったマリは、クスリと小さく笑った。 「珍しいねぇ~。つ~か、二人が喧嘩してるとこなんて、私始めて見るかも~!これは貴重だよぉ~!」 「だから喧嘩じゃねーって!」  ムッとした表情で、悠木はムキになり言うと、マリは驚いてしまう。「ごめん。」と慌てて謝るマリに、悠木はハッと我に返ると、慌てて謝った。 「あぁ・・・悪い・・・。マジで喧嘩とかじゃないからさ。」  そのまま俯いてしまうと、又溜息を漏らした。そしてチラリとマリの顔を見ると、言い難そうに聞く。 「あ・・・あのさ。お前って、確か去年・・・白井と同じクラスだったよな?」  突然の質問に、マリの顔はキョトンとしてしまう。 「え?そうだけど・・・。それがどうかしたの?」  不思議そうに首を傾げると、困った様子で頭を掻き毟る悠木を、不可解そうな目で見つめた。 「いや・・・その。あいつさ、夏でも長袖じゃん?お前、その・・・見た事有る?半袖着てる姿とかさ。プールの授業の時とかでも・・・。同じ女子だし。」  ハッキリと言わない悠木に、マリは不審に思いながらも答えた。 「一年の時も、ずっと長袖だったよ?何か知らないけど、プールの授業はいっつも欠席で、出た事無いし~。何?リスカの跡とかって噂の事、気にしてんの?」 「いや、そう言う訳じゃねーよ。」  そう言うと、黙り込んでしまう。  しばらく沈黙が続くと、「はいっ!」とマリが、元気よく方手を上げながら叫んだ。 「私も質問!穹君と一年の時も、同じクラスだったでしょ?悠木と穹君、どっちが告白とかされた回数多いのぉ~?」  ニコニコと嬉しそうな笑顔で聞いて来るマリに、悠木は呆れた表情を見せると、下らなさそうに、「知らねー。」と言って話を流そうとした。 「いいじゃんいいじゃん~!教えてよ~!あっ!実は穹君の方がモテてたり?結構母性擽るタイプだし~!悠木負けていじけてんのぉ~?」  ニヤニヤとニヤケ顔でしつこく言うマリに、悠木は大きな溜息を吐くと、呆れながらに言う。 「あのなー。いくら仲良いつっても、穹は告白されたからって、一々俺に報告する様な性格してるか?」 「あ~確かに・・・それは言えてるねぇ~。」  悠木の言う事も一理有ると思い、納得してしまうと、「アハハ・・・。」とマリは苦笑いをした。 「それじゃ~好みのタイプは?好きな音楽が同じだと、やっぱ好みのタイプも似てたりするのぉ~?」 「好きな音楽が同じだからって、好みのタイプまで同じとは限んねーし。人それぞれだろ。」  面倒臭そうに答えると、「そうだよねぇ~・・・。」と、マリは又も苦笑いをしてしまう。 「それじゃー次、俺の番な。」 「へ?順番なの?」  突然の悠木の言い出しに、マリはキョトンとした顔をし、驚きながらも頷いた。悠木はニッコリと笑い頷くと、その後少し真剣な表情へと変える。 「お前さ、一年の時白井にガン無視された事、腹立ててたじゃん?それって今でも腹立ててんの?ってか、白井の事嫌ってんの?」  又音苑の質問をする悠木に、マリは不満そうな顔をしながらも頷いた。 「また白井さん・・・。お察しの通り、嫌いだけど。感じ悪いし~。」  そう言ってソッポを向くマリだったが、その姿を見た悠木は、ホッと肩を撫で下ろす。 「そっか。じゃーそのまま嫌っててくれれば、穹も俺も、嬉しいかな。」 「へ?何それ~?」  意味の分からない事を言う悠木に、マリは不思議そうに首を傾げた。しばらくはジッと悠木の顔を見て考えると、ニッコリと笑い、嬉しそうに言う。 「よく分かんないけど、喜ばれてんならいいかな~。ま、今更友達になるとか有り得ないし~。未だに態度悪もん!私に対してさぁ~!」 「私に対して・・・。」  マリの言葉を聞いた悠木は、一瞬不安が過った。  穹の言っていた言葉が、頭の中に浮かぶ。だがそれは穹の考えで有り、実際の音苑の考えは分からない。ニコニコと笑顔を見せるマリを見ると、確かに穹の言う通り、マリには話さない方がいいと思った。能天気なマリだが話せば、マリを不安にさせてしまうだけだろう。 「どうかしたのぉ~?」  不思議そうに聞いて来るマリに、「何でも無い。」と、悠木は勉強の続きを始める様言った。  勉強も一段落すると、穹との待ち合わせ時間に間に合う様、少し早目に切り上げた。そのまま会場へと行ける様にして来た悠木は、マリに別れを告げると、駅へと向かう。  電車に乗り、待ち合わせ場所の会場へと到着をすると、穹の姿を探した。既に先に到着をしていた穹の姿を見付けると、急いで穹の元へと向かう。  「お待たせ。」穹に声を掛けると、穹は「お疲れ様。」と、笑顔で迎えて来る。この間の事は、穹は余り気にしていない様子だ。  二人は早速会場内へと入ると、既に沢山の人が中に居た。上演が行われるコンサートホールに向かい、人が蟻の列の様に長々と続いている。二人も列の中へと加わり、エスカレーターで上の階へと上がると、コンサートホール内に入った。中へと入ると、壮大に広がるホールが飛び込んで来る。 「はぁー!いつ見ても良いねー!この豪華なホールに、妙な緊張感!」  悠木は胸を弾ませると、嬉しそうに上から見えるホールの全体を見渡した。  穹は手摺りに捉まり、そっと下を覗き込むと、上から見える高さに少し怖くなってしまう。このまま落ちたら、真っ逆さまに下まで落下してしまいそうだ。 「これ間違えて落ちた人とか、居ないのかなぁ・・・?」  ボソリと呟くと、「体乗り出してたら落ちるぞ。」と悠木に言われ、慌てて手摺りから離れた。  二人は自分達の座席を探し見付けると、隣同士に座り、入口で貰ったパンフレットの束が入ったファイルを膝の上に置いた。 「ラッキー。真ん中。」  悠木は鞄を足元に置くと、早速上演スケジュールと演出者の載った紙を、ファイルの中から取り出して見始めた。穹もファイルから取り出し見ると、他の上演予定チラシも見始め、チェックをする。 「あ、来年は結構ワルツやバレエが多いね。」 「俺そっち系はパス。踊りはよく分かんねーし。オケにもよるかなー。」  気付くとホール内は人で埋め尽くされ、上演時間が迫り、殆どの人が着席していた。オーケストラの奏者達が、オーケストラビット内へと入って来ると、音のチューニングをそれぞれ始める。  アナウンスが流れると、ホール内の照明が落とされた。指揮者が登場し、一斉に拍手が湧き上がる。拍手が静まると同時に、指揮者は指揮棒を翳す。指揮棒が振られると共に、ゆっくりと演奏が始まると、幕が上がり、第一幕が始まった。  二人はオーケストラの音楽と、オペラ歌手の歌声に静かに耳を傾けた。濃厚なチョコレートを、ゆっくりと舌で味わうかの様に聴き惚れると、自然と心が心地よくなって来る。  四十分に亘る第一幕が終わり、幕が下りて行くと、再び拍手が湧き上がる。ホール内の照明が付くと、再びアナウンスが流れ、休憩時間へと入った。  二人は背伸びをすると、ぞろぞろと席を立つ人達と共に、二人も席を立つ。 「俺トイレ行って来るけど、お前どうする?」 「あぁ・・・俺はいいや。下行って、ビット内見て来る。楽譜見たいし。」  ホール内から出ると、悠木はトイレへ、穹は一階へと、それぞれ向かった。  一番近くのトイレへとやって来た悠木は、ズラリと並ぶ長蛇の列に、嫌そうな顔をしてしまう。 「すげぇー混んでるし・・・。ってか、どこ行っても同じか・・・。」  仕方なく悠木もトイレの列に並ぶと、順番を待った。女子トイレに比べ、男子トイレは比較的進みが早く、意外にもそこまで待たずに済むと、こう言う時、男でよかったと思ってしまう。  悠木は穹の居る一階へと向かおうとすると、人混みの中、一瞬見覚えの有る姿が目に映った。まさかとは思い、後を追い掛けて行くと、相変わらず長袖を来た、音苑の姿を見付ける。 「マジかよ・・・。何であいつがここに・・・。」  悠木は険しい顔をすると、一階へと向かおうとしている音苑の元へと向かった。  一階には穹が居る。音苑と穹を、余り会わせたくはない。穹から話を聞いた後だから、余計にだ。  悠木は音苑の側まで行くと、「白井。」と声を掛ける。音苑は振り返り、悠木の姿を見ると、驚く事無くニッコリと微笑んだ。 「あら、渡瀬君。渡瀬君も、ビットを見に行くの?」  当たり前の様に話して来る音苑に、悠木の顔は更に険しくなってしまう。 「何でお前が居んの?てか、話した事ねーよな?俺等。」  音苑はニコリと笑うと、嬉しそうに言った。 「何でって、穹が居るからに決まってるじゃない。私、穹の事なら何でも知ってるのよ。穹の友達なら、私も友達でしょ?」  音苑の発言に、悠木はゾッとしてしまう。明らかに普通じゃない発言に、薄気味悪く感じた。 「お前と友達になった覚えねーし。てか、穹が居るからとかって、お前そう言う行動何て言うか知ってんのか?」  音苑は不思議そうに首を傾げると、又ニッコリと笑う。その笑顔が不気味に思えた悠木は、思わず眉間にシワを寄せた。 「ストーカーって言うんだよ。お前、穹に付き纏うなよ。言っとくけど、全部話し聞いてるから知ってるし。ガキの冗談マジにしたお前だって悪いんだから、逆恨みするのもいい加減にしろよな。」  音苑を軽く睨み付けながら、真剣な口調で言うも、音苑はクスクスと笑い出した。 「知ってるわよ、ストーカー位。でも私の場合は愛情表現だから、ストーカーとはちょっと違うかしら。」 「はぁ?何が愛情表現だよ!それをストーカーって言うんだろーが。穹に構うなよ!」  強い口調で言うも、音苑は更に可笑しそうに、クスクスと笑う。 「まだ音羽の方が分かってるわね。穹は私に構って貰えて、本当は嬉しいのよ。だって穹は、私の事が好きなんだから。私もそうよ?私も穹は大好きな友達だから、構ってあげるの。」  悠木はグッと拳を強く握り込むと、込み上げる怒りを必死で抑える様に、声を沈めて言った。 「お前が構うと、穹は苦しむだけなんだよ。穹はお前と、関わらない方が一番いいんだ。穹を苦しめて、そんなに楽しいのかよ。」  すると音苑は、クスリと不適な笑みを浮かべた。 「穹の事を苦しめた事なんて、一度も無いわよ。私は穹が大好きな友達だから、一緒に居たいだけよ。穹もそうでしょ?私達は誰よりも仲良しな、友達同士なんだもの。穹はね、ずっとずっと私と一緒に居たいのよ。私もそうだから。」  当然の様な物言いで言って来る音苑に、悠木は背筋がゾッとしてしまう。穹の言っていた、『本当に』頭がオカシイと言う言葉を、実感してしまうと同時に、だからこそ穹とはもう、関わらせてはいけないと思った。 「穹がお前の目を覚まさせ様としてるなら、俺は穹の目を覚まさせてやるよ。お前の事を、一ミリも思い出さねー様にさせてやる。」  悠木は音苑を睨み付けながら言うと、音苑は「ふ~ん・・・。」と、悠木をジッと見つめ少し考える。そしてクスリと小さく笑うと、不敵な笑みを浮かべながら言う。 「それは貴方の役目じゃないわ。横取りすると、音羽が怒るわよ。それに渡瀬君。貴方まだ、穹の友達じゃない。」 「何だよそれ・・・。どう言う意味だよ。」  悠木の胸に、不安が過る。 「だって穹から、全部教えて貰えてないもの。友達にもなれていないのに、友達以上になんかなれないわよね。」  音苑の言葉に、一瞬悠木の鼓動は高鳴ってしまう。  音苑はニッコリと微笑むと、足を歩ませ悠木の横にと立った。 「心配しなくても、貴方にはもう話し掛けないわ。貴方を壊すのは、私じゃないから。」  囁く様に言うと、そのまま歩き出し、その場を去って行ってしまう。  悠木はゆっくりと後ろを振り返ると、額に微かに汗を掻きながら、音苑の後ろ姿を睨みつけた。  悠木は急いで一階へと駆け降りると、ビット付近に群がる人混みの中から、穹の姿を探した。ビット内に身を乗り出し、嬉しそうに楽譜を見ている穹を見付けると、息を切らせながら穹の元へと駆け寄る。  「穹!」大きな声で穹の名を呼ぶと、穹は悠木の呼び声に気付き、後ろを振り返る。慌てた様子の悠木に、穹は少し驚いてしまうと、「どうかしたの?」と聞くが、悠木は何も言わず、穹の腕を掴んで引っ張った。 「ちょっ・・・何?どうしたの?」  戸惑いながら尋ねると、悠木は穹の腕をグイグイと引っ張りながら、ホールの外へと出て行く。 「今日はもう帰ろう。チケット代俺が返すから。」 「え?何で急に?まだ第一幕しか見てないよ。」  困惑する穹だったが、悠木は気にする事無く、そのまま会場の外へと穹を連れて出る。  外へと出ると、悠木はキョロキョロと辺りを見渡し、音苑の姿が無いか確認をした。どこにも音苑の姿は見当たらず、ホッと肩を撫で下ろすと、「悠木!」と何度も呼んでいる穹の声に気が付く。 「腕痛いよ。何なんだよ急に・・・。」  意味が分からず、不機嫌な顔をしている穹に、悠木は慌てて掴んだ腕を離すと、「悪い・・・。」と俯いた。 「何?気分でも悪くなったの?」  暗く俯く悠木に、穹は心配そうに聞くと、悠木は困った表情を浮かべ頭を掻く。 「いや・・・そう言うんじゃなくて・・・。あー先生が居たんだ!うちの学校の!あのすっげぇー校則とかに五月蠅い奴!あいつに見付かったら、グチグチ言われて追い出されて、大変だろ?だから退散した方がいいかなーって思ってさ。」  悠木はその場の思い付きで、適当に言い訳をした。 「あぁ・・・阿部先生?確かに・・・コソコソ隠れながら見ても、落ち着かないだけだしね。見付かって怒られて追い出されるなら、先に逃げちゃった方がいいかも・・・。」  あっさりと信じてしまった穹に、悠木は後ろめたさを感じながらも、「そうそう。」と頷く。 「今日は残念だったって事で、引き上げようぜ。チケット代、お前に払ってやるからさ。俺があいつ発見したせいだし。」 「いいよ別に。夕飯まだだし、このまま帰るのも何だから、どっか食べにでも行こう。」  笑顔で言って来る穹に、「本当、お人好しだな・・・。」と、悠木はボソリと呟いた。「何か言った?」と聞かれるが、「何でも無い。」と言うと、穹から視線を逸らせる。 「あぁ・・・俺この後ちょっと用事思い出したからさ。悪いけど、今日はもう解散しようぜ。」 「そうなの?そっか・・・じゃあ仕方ないね。」  残念そうな顔をする穹に、「悪いな。」と言い、悠木は申し訳なさそうに頭を掻き毟った。  「じゃあ、また明日学校でね。」手を振る穹に、悠木も手を振り返すと、戸惑いながらも穹に聞く。 「なぁ・・・俺はお前の、友達だよな?」  唐突な質問に、穹の顔はキョトンとしてしまうが、その後ニッコリと笑い、笑顔で答えて来た。 「友達に決まってるじゃん。急に何言い出すの?」  穹の言葉を聞き、悠木はどこかホッと安堵すると、照れ臭そうに笑った。 「そっそうだよな。悪い、突然変な事聞いて。真っ直ぐ帰れよ。」  二人はお互いに別れを告げると、それぞれ会場を後にした。
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