1-1、二重らせん

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 「ティッシュ配りは終わったんだろ。お疲れ」    高橋のバイト終わりを見計らって、だからこのタイミングで声をかけてきたのだろうと見当はついた。  「レポートだったら出しましたよ。牛か馬か豚の観察日記」  「ああそれな。どれでやった?」  「俺馬です。あいつは豚です。あいつはまだ提出してないみたいですけど…」  「3年になったら各自の担当を割り当てるから、今のうちにいろいろな厩舎(きゅうしゃ)を見とけよ。熱心な奴は朝早くから希望のところに顔出して、アピールしてるぞ」  「はあ、まあ」  外見に気を使っているチャラ男の割に、意外と指導に熱心な今ちゃんは、カオルの顔を覗き込んだ。     「お前さ……」  「なんですか?」  「そんな、迷惑そうな顔するなよ」  「こういう顔です」     カオルのむっとした態度に、今ちゃんはニヤッと笑った。  「お前さ、俺のバイトやらない?」  おまけにウィンクまでつけた今ちゃんは、じっと返事を待った。     「……それこそ、町田の用でしょ」  「だよな…」  はいこれで話は仕舞いと、その場を離れようとするカオルに、今ちゃんは続けた。  「それがさ、町田には不向きなバイトなんだ」  「はあ? あいつでダメなら俺なんかがつとまるわけないでしょ」  准教授の先生に揶揄われてるのだろうか。町田には無理で自分に向いているバイトなんてあるのだろうか。  なんだか腹が立ってきていた。今ちゃんの表情だけでは真意の程はわからないけれど、どっかがなにか気に食わなかった。町田だったらどうするだろう。近くにひょっこり町田がいないものかと、カオルの目は泳いだ。  「町田はさ、チョロチョロとよく動くだろ。バイトも1日に2、3個かけ持ちしてるし」  「詳しいですね」  「お前暇だろ。特にバイトもしてないし、ちょうどいいんだよ」    なるほど、とカオルは思った。  そういうことなら確かにうなずける。けどそんな、じっくり取り組む仕事(バイト)ってなんだろう?   
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