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「ちぃ?」
急に手を引っ込めたので、おうちゃんは不思議に思ったのだろう。いつもよりほんの少し、心配そうな顔をしている。
「あの……その」
見上げたおうちゃんの耳の端っこ、ほんのり赤くなっていた。
おうちゃんも恥ずかしかったんだろうか。もしかして、わたしと一緒?
いつの間にか身体が熱い。きっと、おうちゃんの赤いのがわたしにも伝染ってしまったんだ。いけない、勉強しなくちゃダメなのに。
「あ……ご、ごめんね! なにしてるんだろう、わたし……。もう大丈夫だから……っ」
今度こそ立ち上がろうとしたら、おうちゃんの手がふいにわたしの頬を撫でた。
「お、う、ちゃ……」
「ーーさわるだけで、いいの?」
「……えっ」
おうちゃんの熱っぽい瞳から、わたしは逃げることができない。
「だけって……だって……他にどう……ーー」
「千歌」
どういうこと? そう言おうとしたけれど、おうちゃんの言葉に遮られる。おうちゃんの瞳、微かに細くなった。
「こういうこと」
気づいたら、おうちゃんの顔が間近に迫っていた。
おしまい♡
『唇』
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