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卓袱台の端っこらしきものが視界に入るも、他にめぼしいものが見当たらない。やはり、全体を見渡すのは難しいようだ。
そこへ、スッと部屋の襖が開き、すぐさま閉じられる音がした。途端に心臓が激しく打ち、手に汗が滲む。
しばらくすると部屋の主である、紺の着物姿の天宮くんが視界に入る。やはり此処は天宮くんの部屋だったのかと、僕は期待に胸を膨らませた。
息を殺し、天宮くんの頭頂部を見つめていると、心なしか肩が揺れて見えた。それに微かに天宮くんのものと思わしき、ただなるぬ息遣いが聞こえてさえくる。
走って帰ってきたのだろうか。だが、そんなに急いで帰ってくる用事があるのなら、突っ立っているのもおかしな話である。上からでは天宮くんの表情が見えず、様子が今ひとつ分からない。
もどかしさに苛立ちを覚え始めた頃、ようやく天宮くんが動きだす。唐突に辛子色の帯に手をかけた。ゆっくりと帯を解き、はらりと床に落とす。今度は少しもどかしげに紺色の着物を肩から滑らせ、白い長襦袢が現れる。
細い紐を解き、地面に落とす。襦袢の前がはだけ――僕はそこで目を見張った。
天宮くんの下半身の雄が上を向き、外部に晒されていたのだ。
下着を付けておらず、僕は驚きのあまり顔を上げ息を呑む。
いつも能面のように表情を変える事がなく、冷静で臆するところを見たことがない天宮くん。そんな彼に、この様に秘められた変態的趣向があったとは驚きだ。
僕は乾いた唇を舐め、もう一度下を覗き込む。
天宮くんは立ったまま、自らの雄に右手を添え動かしていた。
「はぁ、ん……っ……」
苦しげに襦袢の袖を噛み、声を漏らすまいとしているようだった。
表情がわからないのが非常に残念だ。あの女の様な美しい顔が、苦痛に歪んでいるのだろうか。
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