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四
暁はふらふらと歩いた。
菓子屋や小間物屋を通り過ぎて気づくと神社に辿り着いていた。
祈る言葉も思いつかず、そばにあった大きな石に腰掛け、ぼぅっと辺りを眺めた。
祈りに来る女が、一人、二人と絶えることなく神社を訪れた。
(生きてる限り悩みは尽きない、か)
徐々に日が暮れ、辺りは朱く染まっていくのがわかった。
「黄昏、誰ぞ彼」
暁は呟いた。
「見間違えでもいいから、逢えたらいいのに」
うずくまり、徐々に辺りが薄暗くなるのを感じた。
すぐ近くから足音が聞こえ、暁は顔を上げた。そして、言葉が口をついて出た。
「美露?」
しかしその人が近づき、正体が分かった。
薄紅だった。
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