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五
「お、気づいたみたいだね」
声の主を探すとそこには山吹の姿があった。
暁は、意識を失う前のことを思い出そうとした。
「私、生きてるの?」
「うん。帯にかすって深くは刺さっていなかったって。命に別状は無いって医者が言ってたよ」
「薄紅さんは?」
山吹は視線を落とした。
「死んだ。そりゃそうだよね。しくじって生きてたら酷い折檻が待っていただろうから」
視界が滲むのを感じた。
「私の代わりに美露は死んだようなものなの。私の、代わりに」
暁はそれがなにより辛かった。
あふれる涙をそのままに山吹は暁の額にかかる髪を直した。
「それは薄紅の呪の置き土産。気にする事はない。あんたのせいじゃない。悪いのは、薄紅と、壱夜って男」
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