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二
店に戻ると皆何事もなかったかのようにそれぞれの仕事をしていた。
吉原では刃傷沙汰、心中、自死など珍しくもない。
ただ、自分と美露だけは縁がないと思っていただけだった。
暁はぼんやりと朝風呂に入り、広間で臭い米と透けるほど薄い味噌汁、漬物を受けとった。
「暁、大丈夫かい?」
向かいに座る山吹が声をかけた。
「うん」
「でも、あまり食べてないよ。こんな不味い飯でも食べなきゃ体が持たないよ」
隣に座る薄紅が心配そうに言った。
「ちょっと食欲がないだけ。大丈夫」
暁は吐き気をこらえ、味噌汁を口に運んだ。
「うっ」
口に手を当て、何とか飲み込む。
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