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「私たちは借金が返せるまで吉原からは出られない。出る方法は借金を返し終えるか、身請けされるか、……死ぬか」  薄紅はただ黙っていた。 「生きてここから出る前に大体の人は病気で死んじゃう。梅毒って苦しいから。美露はそうなる前に死んだのかな」 「暁は羨ましいの?」 「わからない。でも、裏切られたって思ったの。私は親に騙されて売られてここに来たから、信頼していた美露が裏切ったって思ってしまったの」  そして最後に小さな声で付け加えた。 「だけど、ここから出られて羨ましい」  薄紅は暁の肩を軽く叩いた。 「ここは苦界だからね。そりゃあどんな形でも出られたのなら羨ましいと思うのも無理はないよ。でもね、あたしは生きて出たい。それが二番目の望み」 「一番は?」 「好きな人と添い遂げたい」  暁は笑った。 「私たちには不可能に近い望みね」 「そりゃそうだよ。まずは間夫(まぶ)(情夫)を探すことから始めなきゃ」
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