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一
裏切られた。
そう暁は心で叫んだ。
「亡くなったのは真夜中でしょう」
検視ができる男が顎をかきながら言った。
木から下ろされた美露は朝日に照らされ、まるで眠っているようだった。
「まったく、迷惑な話だ。美露の借金はまだ返し終わっていないだろう」
楼主は苛立たしく怒鳴った。
なんで。
どうして。
暁の頭の中はそれらの言葉が回り出した。
そして何かが飛び出ないように口元を手で押さえてその場を走り出した。
店を出、細い道を抜け、どこかの店の裏手にしゃがみ込んだ。
ここなら人はあまりこない。
暁の脳裏に思い出されるのは美露の笑顔、笑顔、笑顔だった。
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