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「でも、しちゃった。はは、玲ちゃん顔真っ赤」
「違うもん、これは夕陽の色だもん」
「ふうん。じゃあ陽が沈むまで続けよ」
玲ちゃんは小さい声で「ばか」と言って、そっと目を閉じる。もしかして、今がチャンスなんじゃないかな。玲ちゃんの頬に手のひらを添えてみる。しっとりとした頬は想像以上に柔らかくて。両手で中央に寄せると、可愛らしい唇がぷっくりと盛り上がった。
(ああ……可愛い……!)
念願のその嘴に吸い付こうと顔を近づけた瞬間、玲ちゃんがぱちりと目をひらいた。
「もう、純何してるの?」
頬を寄せたままだから、嘴の状態のままそれがぱくぱくとしてて、可愛くて堪らない。
「んー、玲ちゃんがかわいすぎて見惚れてた」
「もう陽が沈んじゃったからおしまい」
玲ちゃんは俺の手を掴んで外してしまう。ふと気づけば、夕陽はすっかり姿を隠していて、夜の気配で辺りは満ちていた。残念だけど、おあずけだ。
「あー……残念。しょうがない。帰ろっか」
「そんなに残念?」
「うん。ものすごくね。でも、次の楽しみに取っておくよ」
「ふうん」
ちょっと不満そうな声がした。本当は俺だってもっとキスしたかったけど。
……それはまた、次の機会に。
そうだな、次の夕陽をふたりでまた見るときにでも。
つまり、それは明日なんだけど。
おしまい
→→柔らかそうなほっぺ、むぎゅってしたときの唇
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