次の夕陽まで、おあずけ

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 玲ちゃんの手を握って教室を後にする。少し大きいカーディガンの袖からちょっぴり見える指。計算しているのかなってくらいかわいい。いや、多少はしてるんだろうけど。  梅雨の時期は広がるから、夏は暑いから、とポニーテールにしていた彼女の髪は、今はふんわりと下ろされている。だけど、肩に当たった部分だけがぴょこんとはねている。 「玲ちゃん、髪伸びたね」  そっとその髪を掬って、彼女の耳に掛けた。一日中そうなっていたからか、すっかり癖づいてしまっているみたいだ。その一束だけが言うことを聞かない子どもみたいにそっぽを向いている。たまに、玲ちゃんのこういう部分を見つけると得した気分になる。普段は頭のてっぺんから爪の先まできちんと綺麗にしているから。 「純は髪長いほうが好き?」 「うーん、玲ちゃんに似合ってれば俺はたぶんどれも好きだよ」  そう返事すると、玲ちゃんは俯きながら、俺の手を握る力をきゅうっと強めた。照れた顔もかわいいから、見せてほしいのになって思うけど、それを言うとますます見せてくれなくなっちゃうから言えないんだけど。
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