次の夕陽まで、おあずけ

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「秋だから、マロンパフェ食べに行かない?」  放課後、まだクラスメイト達が残る教室で玲ちゃんが小首を傾げながら訊いてきた。最近は女の子たちがくれるドーナツやマカロンを丁重にお断りするようにしたから、帰るころにはほどよく小腹が空いている。パフェという単語に反応するように、腹の虫が準備万端だと返事をした。 「やだ、純。そんなにお腹空いてたの?」  玲ちゃんは俺の腹に手を当てながら、頬を緩ませた。今日は玲ちゃんと付き合い始めてちょうど3か月の記念日で、なんとなく普通に帰るのはもったいないな、なんて思っていたんだけど。俺より先に返事するなんて、腹の虫には後で厳しく言っておく必要があるな。  ちなみに玲ちゃんっていうのは、学校中の男たちが彼女にしたいってくらいかわいい女の子なんだ。本当にかわいくて、俺の彼女っていうのがたまに信じられないくらい。でも、先週末に買ったお揃いのキャラメル色のカーディガンを着て並んでいると、ちゃんと恋人同士って感じがするんだ。 「うん、お腹すいちゃった。玲ちゃん早く行こう」
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