はるかなる伝説

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はるかなる伝説

遠い遠い昔人間は 背中に翼を持って 鳥のように自由に 空を飛んだと言う 俺たちは人間が 翼を失くした時代に生まれ 空の青さも 雲の白さも 知らずに生きてきた 昔のように 空を飛べたなら 悲しみも苦しみも 忘れられたのに 空よ なぜおまえは 俺たちから遠ざかる 人の記憶に 帰らざる日の 伝説だけが残る 遠い遠い昔人間は 木々と話せる言葉を持って 鹿のように軽やかに 森を駆けたと言う 俺たちは人間が 自然を憎む時代に生まれ 川の清さも 霧の香りも 知らずに生きてきた 昔のように 愛し合えたなら 裏切りも憎しみも 知らずにすんだのに 森よ なぜおまえは 俺たちを見放した 人の記憶に 今は悲しい 伝説だけが残る 時は流れて 何もかもが過去になり 人の記憶に 失われた日の 伝説だけが残る
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