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裸足では戦えない相手
ウチの母親はすさまじい。
「ちょっと! スリッパ持ってきて!」
さすがに裸足じゃ厳しいか……。あたしは母親の言う通りスリッパを渡す。
「このすばしっこい奴め!」
その目の前には黒くてカサカサ動くもの。母親はその相手とスリッパを持って対峙する。
「スプレーの方がいいんじゃない?」
あたしのアドバイスには聞き耳を立てることなくスリッパを構える。
「大丈夫! この程度の相手ならスリッパで上等! バトル上等! ってね!」
構えたスリッパを奴に向ける。
カサカサ動くもののスリッパで殴られた時のグロテスクな結果を見たくないあたしはスプレーを母親に渡す。
でも、母親はいらないと言い張るから、あたしは母親がスリッパで叩き潰す前にスプレーで固めた。
「ちょっと! せっかく構えてたのにー!」
「残骸気持ち悪くなるのあたし見たくないのよ。それにもう動けないよ、このゴキブリ」
そう、母親とバトルしていたのは真っ黒の色をしてカサカサ動くゴキブリだった。
「次はスリッパで倒す!」
「やめてよ。本当に」
そんな会話をしながらゴキブリホイホイを部屋に設置するのだった。
ー完ー
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