トランスジェンダーの家族

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最初の頃侑李さんはお店に来て私を指名してくれていたけれど、知り合って2ヶ月過ぎた頃に侑李さんから飲みに誘われて同伴するようになった。 侑李さんは週1回程度主に週末金曜日に私と同伴してくれることが多く、このような関係が2年ほど続いているけれど、私は侑李さんからホテルに誘われたことはなく体を触られたこともない。 侑李さんは酔った勢いで私に説教したり暴言を吐いたりすることはなく、飲みすぎて潰れるようなこともない、きれいな飲み方をするお客様だ。 また、飲み歩いたりキャバクラで飲んだお金は、ツケることはなくきちんと支払ってくれる。 侑李さんは1晩で大金を使うようなお客様ではないけれど、毎週定期的に私と同伴でお店に来てくれるので、私にとってもお店にとっても大切な常連のお客様になっている。 キャバクラではお店を辞めるキャストや新しく入ってくるキャストなどキャバクラで働くキャストは比較的入れ替わりが激しいけれど、私はこのお店を辞めるつもりはない。 それは私は毎週侑李さんと会うのが楽しみになっていて、お店を辞めると侑李さんとお別れになるのではないかという思いからお店を辞めようという気持ちにはなれない。 私は侑李さんは私のことをどう思っているのか、侑李さんにとって私はどのような存在なのか知りたいけれど、とても怖くて聞くことはできない。 でも私は侑李さんとこうして会って、楽しい時間が過ごせることを幸せに思っていて、この時間がいつまでも続いてほしいと心から願っていた。 寒さが増してきた11月の週末金曜日、私はいつものように侑李さんに同伴に誘われて個室の居酒屋に入った。 侑李さんは最近あった出来事や最近読んだ漫画の話を楽しそうにしてくれた。 私はそんな侑李さんの顔に見とれていると侑李さんが、 「そんなに麗さんに見つめられると恥ずかしいなぁ…」 と話したかと思うと、 「麗さんと結婚する男性がうらやましいな!」 と侑李さんは私が思ってもいなかったことを話した。 私はここぞとばかり侑李さんに率直な思いをぶつけてみた。 「侑李さんは私のことをどう思っているのですか?」 侑李さんは少し真剣な表情になって、私の顔をまじまじと見つめながら、落ち着いた口調で話を始めた。 「もし僕が麗さんと結婚出来たら、とても幸せだと思う!  でもできないんだよ!」 この言葉を聞いた私は、聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうかと考えた。
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