逢魔が時の誘惑

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昼と夜の間 空を見上げれば黒、青、黄、橙…そのグラデーションに誰しも見入り…もしかしたらその美しさに息を呑んだかもしれない。 俺はこの時間が好きだ 田舎のバス停…ちょっと後ろを振り向けば森の入り口。 一時間に一本しか表示されていない時刻表。 空を見ていると… 「今日も見上げているなんて、貴方も物好きよね」 隣には先程まで誰もいなかった。 だが…俺は知っている…。この為に…この女性に会う為にわざわざ次のバス停で降りて帰らず、ここのバス停で降りるのだから…。彼女に初めて会ったのは偶然。降りるバス停を間違えた。今は毎日ここで降りる。 「まぁな」 「今日もする?」 「ああ」 二人の秘密の時間…。 彼女は綺麗でいつも麦藁帽子に薄黄色のワンピースにサンダルを履いていた。 ゆっくり肩紐が降りていく。 いつも下着はつけていない。 やがて蕾が… そして、もう片方の手はワンピースの下の部分を上に持ち上げ… 微笑み、頬を赤らめ恥ずかしそうに…そして…何かを待っている表情… いつも…胸が…鼓動が…高まる瞬間。 彼女がここに現れることは知っているが、彼女が何者かなんて知らない。 今は知りたいとも思わない… ただ知り始めた快楽に溺れてしまうだけだ。 やがて… 空が黒く染まり星が輝きだすと、バス停の椅子に座り服を整えていた彼女は…いつの間にか消えていた。 二つの光が近づいて来る。 俺の前でバスが停車し扉が開く。 ここでいつも… 明日は名前を聞こう と、思うのだが…若さ故か彼女の魅力には勝てず本能のまま…そして…思考が止まってしまう。 もしかしたら、名前を聞いてしまうと後悔するのかもしれない。 ただ…彼女の右目の下にある小さなホクロ。 どこかで… キィィ バスが停まり俺は降りて家に歩いて帰るのだった。
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