リベロ

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 秋の海風を左頬に感じながら、1050mの能登島大橋を自転車(チャリ)で一気に走り抜ける。下りの加速で付けた勢いで、ペダルを踏み抜く。  聞くだけで汗が噴き出すほど煩かった、ウミネコの鳴き声。その「アーオ、アーオ」と甲高い声は、最近やけに遠くから聞こえるようになっていた。  8年前、能登島にあった中学校が閉校になった。だから今日もこうやって、海の向こうの学校に行くために長い橋を渡る。  制服は中間服になったけど、まだまだ暑くて半袖でないとやってられない。カッターシャツを通り抜ける風。火照った体に心地良い。  限界までスピードを上げて風を切った。    
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