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その日は職員会議の為、部活動は中止だった。給食を終えたら下校になる。
「今日、時間あっけ?」
給食の食器トレーを前に持って行きがてら聞くと、高橋はこくんと肯いた。まだ皿の中におかずが残っている。高橋は口いっぱいに頬張ったものを飲み込んだ。
「5時15分くらいまでなら」
「細けえな」
「日が沈むと、寒気が酷くなるから」
「そっか。分かった」
昼間から夜の間は大丈夫ってことか。行きたい所まではそれくらいあればじゅうぶんだ。
「チャリ乗れっけ?」
「うん。自転車で来た」
「よし」
「どこ行くの?」
大きな目をまん丸にして見上げてくる高橋に、俺はニッと笑ってみせた。
「とっときの友達、会わせてやるわ。高橋が元気になっても、東京なんて帰ったならんがになるように」
「……横井くん」
呟いた高橋の目の奥がキラリと輝いたような気がした。それが心から嬉しそうで、俺は何だか照れ臭くなって、目を逸らしてしまった。
「晴海って呼んでま。名前気に入っとんさけ」
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