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祥太とリベロが遊んだ時間は、優に一時間を超えていただろう。
「お前が『日が落ちるまでに帰る』って言ってんろ」
ようやく説き伏せ、祥太を引っ張り上げた。
祥太の両親が心配してスマホを持たせていたのが幸いし、俺の親父に電話して、軽トラで迎えに来てもらえることになった。
親父が来るまで、リベロはずっと離れずにいてくれた。
自転車と祥太は荷台に。親父に馬鹿でかい声で「何やってんだ」とこっ酷く怒られて、俺たちは亀みたいに首を竦めた。
あれだけ息を切らして登った起伏のある道を、車は十数分で簡単に越える。
「ここでいいです」と祥太が言ったのは、能登島大橋を渡り切った5時15分。
自転車も下ろし、親父には先に戻ってもらった。
「祥太が言っとった時間、過ぎてしもたな」
「日の入りの時間が、東京より13分遅いんだね」
スマホで調べながら答える祥太。いいなあ、俺もスマホ欲しい。顔を上げると、祥太のマフラーと同じ色の夕陽が、水平線の向こうに落ちようとしていた。
空が赤々と染まる。二人並んで、こっちに真っ直ぐに伸びてくる、太陽の光の筋を見つめていた。ちらりと祥太を横目に見ると、それに合わせるように相手もこっちを向いた。
何かを決意したかのような表情に、俺も自然と真剣に向かい合った。
「風邪をひいたのは、夏の全中の時……。その時、補欠の三年生が言ってたんだ。
『高橋がいるから、最後の大会に出られない』って」
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