夕日が沈む前に

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 祥太は一度大きく深呼吸し、眉間にシワを寄せた。 「試合、風邪が治ってないフリして、休んだんだ」  駿河山学園は控えの層も厚いと聞く。その中で勝ち取っていたレギュラー。  僻んでる奴が悪いけれど、自分が三年生だったら、最後の大会だったら、と思うと、何とも言えなかった。 「その試合で……準決で負けた」  祥太は拳を握りしめた。オレンジ色に染まった横顔に、後悔がじわりと滲む。 「たった一人だけ、仲良しだったチームメイトに言ってたことから広まって、仮病だったことがキャプテンにバレて……。それから、みんなに無視されるようになって、それから震えが止まらなくなって……」 「そやけど、みんな、早う治して帰って来いって、言ってくれてんろ?」  聞いてるだけで苦しくて、俺はつい遮ってしまった。祥太は下唇を噛んで頷き、泣きそうな笑顔で答えた。 「笑いながら、言ってたよ」 ーーどんな風に、笑うとったが。  「僕は逃げてきたんだ。寒さが治らないのはきっと嘘をついた罰だ」  絞り出した掠れた声。また祥太の体が小さく震え出した。日ももう沈んでしまう。
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