34人が本棚に入れています
本棚に追加
祥太は一度大きく深呼吸し、眉間にシワを寄せた。
「試合、風邪が治ってないフリして、休んだんだ」
駿河山学園は控えの層も厚いと聞く。その中で勝ち取っていたレギュラー。
僻んでる奴が悪いけれど、自分が三年生だったら、最後の大会だったら、と思うと、何とも言えなかった。
「その試合で……準決で負けた」
祥太は拳を握りしめた。オレンジ色に染まった横顔に、後悔がじわりと滲む。
「たった一人だけ、仲良しだったチームメイトに言ってたことから広まって、仮病だったことがキャプテンにバレて……。それから、みんなに無視されるようになって、それから震えが止まらなくなって……」
「そやけど、みんな、早う治して帰って来いって、言ってくれてんろ?」
聞いてるだけで苦しくて、俺はつい遮ってしまった。祥太は下唇を噛んで頷き、泣きそうな笑顔で答えた。
「笑いながら、言ってたよ」
ーーどんな風に、笑うとったが。
「僕は逃げてきたんだ。寒さが治らないのはきっと嘘をついた罰だ」
絞り出した掠れた声。また祥太の体が小さく震え出した。日ももう沈んでしまう。
最初のコメントを投稿しよう!