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祥太は涙を拭い、大きく頷いた。
「また……リベロに会いに行きたい」
「ああ。明日も行こ。明後日も、一週間後も、一年後も」
どういうテンションで話せばいいのか分からないまま、真面目くさって言った。祥太はやっと微笑んで、鼻をすすりながら顔を上げた。
「でも、部活の日は行けないよね」
「……そうやな。昼と夜の間んないと、ダメやし」
重いものがストンと落ちた感覚。『部活』という言葉が祥太の口から出てきたことが素直に嬉しかった。
輝いていた水平線が真っ黒になり、薄い青との境目が徐々に曖昧になっていく。
夕日が沈む前に、祥太は少しだけ笑顔を取り戻した。体は震えていない。
でもびしょ濡れだから、風邪をひかないか心配になった。
自転車に乗った祥太が小さくなって見えなくなるまで手を振った。その姿が視界から消えると、一日分の溜息が溢れた。
ふと、視線を感じて道路の反対側を見た。そこには見たことのある女子の姿。
「古川?」
いつから居たんだろう。ジッとこっちを見ていたようで、俺が声を掛けたら2、3歩後ずさった。登校拒否してしばらくになる。久しぶりに顔を見た。
どう声を掛けていいものか。
一瞬悩んだけど、怯えたような古川に、祥太の姿が重なった。
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