寒がりの転校生

7/7
前へ
/20ページ
次へ
 クラスの男子半分のジャージの上着をかぶっても、なおブルブル震える高橋。その隣に腰を下ろし、俺は試合を見つめていた。 「駿河山のチームメイトは、転校とか、納得せなんだんでねえが」  高橋の大きな目が俺を見た。  俺の視線の先では、下手くそながらも楽しそうにラリーを続けるクラスメイトたち。同じ空間にいるのに、なぜかその世界と切り離されたみたいだと感じる。俺が視線を合わせずにいると、高橋もコートの方を向いた。 「体動かしてあったまってる時はいいんだけど。ちょっと前に風邪ひいてから自律神経が狂ったらしくて、もう2ヶ月くらいずっと寒いんだ」  今度は俺が高橋を見たけど、相手が視線を合わせなかった。す、と目を逸らすと、緊張した空気が緩んだ。 「でも、自律神経(それ)が原因かも分からなくて……。お祖父ちゃんの家の近くに温泉があるから、そこで療養したらいいんじゃないかってことになって。チームメイトは、早く治して帰って来いよって言ってくれた」 「あー、和倉温泉」 「うん」 「ほんな効能あるのかなあ」 「分かんない」 「石川県(こっち)のが、寒いぞ」  うちのクラスがボコボコにやられて負けた。敵チームにバレー部3人いたから仕方ない。余った時間、まだやりたい奴がコートに集まっている。それをぼんやり見ていると、吉田が俺たちを呼んだ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加