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クラスの男子半分のジャージの上着をかぶっても、なおブルブル震える高橋。その隣に腰を下ろし、俺は試合を見つめていた。
「駿河山のチームメイトは、転校とか、納得せなんだんでねえが」
高橋の大きな目が俺を見た。
俺の視線の先では、下手くそながらも楽しそうにラリーを続けるクラスメイトたち。同じ空間にいるのに、なぜかその世界と切り離されたみたいだと感じる。俺が視線を合わせずにいると、高橋もコートの方を向いた。
「体動かしてあったまってる時はいいんだけど。ちょっと前に風邪ひいてから自律神経が狂ったらしくて、もう2ヶ月くらいずっと寒いんだ」
今度は俺が高橋を見たけど、相手が視線を合わせなかった。す、と目を逸らすと、緊張した空気が緩んだ。
「でも、自律神経が原因かも分からなくて……。お祖父ちゃんの家の近くに温泉があるから、そこで療養したらいいんじゃないかってことになって。チームメイトは、早く治して帰って来いよって言ってくれた」
「あー、和倉温泉」
「うん」
「ほんな効能あるのかなあ」
「分かんない」
「石川県のが、寒いぞ」
うちのクラスがボコボコにやられて負けた。敵チームにバレー部3人いたから仕方ない。余った時間、まだやりたい奴がコートに集まっている。それをぼんやり見ていると、吉田が俺たちを呼んだ。
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