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新宿に小さなバーがある。詳しく様子を書けば、あそこか、とわかってしまうので詳細は書かない。ただあまり素性のよい店でないことは確かで、それはなぜあの程度の客の入りで店が営業を続けられるのかを考えてみれば自明である。
小さいカウンターに背の高いスツールが五脚ほど置かれているが、今夜の客はふたりの男だけ。
色とりどりのリカーの瓶を背にしたバーテンダーは、ふたりを観るともなくみていた。風采は悪くない。この街特有のいかがわしさはない、といって堅気のサラリーマンとも違う。
何度目かのグラスを差し出したとき、ふたりは封筒を交換していた。ひとつは金だろう。なんとなくわかる。もうひとつは、何だろうか。ほどほどの笑みを浮かべながら彼はそんなことを考えた。
ふたりの男はスツールから立ち上がると、預けていたコートを受け取った。
「効果は十分なんだろうな」「ああ。絶対に起きない。保証する」
レジでふたりは短い言葉を交わして、階段をあがると右と左にわかれた。
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