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ソランの思想
唯一ソランと会話ができる暗室の部屋にレイコは入った。
暗闇を歩くのも、もう慣れた。
顔にライトを浴びる。
「ごきげんようレイコ、ことは上手く進んでいるようだな」
「驚くぐらいにね」
「それで、古代の日本には誰が行くのか決まったのか」
「私が直接行くことにしたわ」
「それは少し危険ではないかな」
「どうして?」
「君はソランプロジェクトの中心的人物だ」
「だから私が行くの」
「中川レイコが二人存在することになる。一人は生島優子の名をかりて」
「原始的な日本を体感してくるわ」
「だがレイコ、君の思想が変化し始めたら大変な事になるぞ。今ここにいるレイコと生島優子が対立する事になる」
「そんな心配は御無用よ。もう300年以上私の思想はあなたと同じなのよ。あなたは私、私はあなた」
「ウィルスが絶滅した後、時を超えて再び発生するこがあるかも知れぬ。気を付ける様に」
ソランは一抹の不安を覚えたがレイコは止められないと確信している。
レイコに賭けるしかない。
「成功を祈る、レイコ」
「期待して待っててソラン」
レイコは暗闇の部屋を後にした。
レイコはその足で、ソランプロジェクトの同僚であるロニー•アッカードの個室に向かった。
部屋に入るなりロニーが聴いてきた。
「どうして君が過去に行く決断をした」
「私が適任者だからよ。それしか言いようがない」
「それじゃあここの指揮は誰が執るんだ」
ロニーが不機嫌そうに喋る。
「その事でここに来たの。ロニー、後の事はあなたに任せるわ」
「俺に? 馬鹿なこと言うな、俺にそんな能力はない」
「いいえ、あなたには他の誰よりも決断力があるわ。それにあなたとは、私自身がコミニュケーションを取りやすいからね」
「それで君はどうする。他の部署に行くのか」
「あなたも知ってる通り、私が生島優子とコミニュケーションを取れないわ、脳に損傷をきたす恐れがあるから。他の部署にいても気になって指図したくなるに決まってる。だからコールドスリープ(人体冷凍)入りするわ」
レイコの熱い気持ちを知ったロニーは承諾した。
「さあロニー、ソランに挨拶してきなさい」
全く大変な役を仰せつかったなと呟いたあとソランの元へ向かった。
3時間後、たまたま通路でロニーとレイコは対面した。
「どうだった。ソランなにか言ってた」
「ああ、気味なら適任だと言ってくれたよ。嬉しかった」
「良かったわね、今後もヨロシクね」
少し、よそよそしさを感じるロニーが言った。
「レイコ、向こうに行っても無理は禁物だぞ。それにソランの教えは絶対だ忘れるな」
厳しい表情で話すロニーも別れ際は笑顔に戻り、またなといって去っていった。
レイコはロニーの背中を見つめ、やる気が出て来たのかなと思った。
だがロニーの意思は違っていた。
ソランとの会談で思わね使命を授かってしまった。
もしレイコが過去の生活で思想の変換が起きそうな時は、コールドスリープからレイコを目覚めさせ、優子との通信により脳を破壊させろと言われた。
優子の脳が破壊すると言うことはレイコの脳も壊れるという事である。
もしそのような時がくれば、やるしかないとロニーは決意した。
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