初顔合わせ

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初顔合わせ

 冬の気配が漂うこの日、慶太と加奈子は生島家に再訪問している。 今、目の前のソファーに生島優子が座っている。 いや中川レイコと対面していると言ったほうがしっくりくる。 背は幾分加奈子より低いが、瓜実顔で品のある顔だ。 肌がミルクの様に白いのは、20年も眠っていたせいか。   「初めまして生島優子です。この度はお世話になりました」 優子が深々と頭を下げるが、何だかぎこちない。   「こちらこそ、僕が砂川慶太です」   「私が仲西加奈子です。良かっですね戻ってこれて優子ちゃん」 軽い挨拶から始まり、これまでの経過を生島定子から主に聴いた。 優子は、小さな頃からの記憶を鮮明に覚えている。 小学生や中学生の頃の思い出をしっかり覚えているという。 定子が驚いたのは、何と優子が覚えているとは思えない赤子の時の記憶まで語りだしたのだ。   「私ですら記憶に無い事知ってるからハラハラする時もあるのよ」定子が笑って話す。 アメリカからの帰国前に健康診断を受けた結果、何処にも異常がない事が分かった。 ハンチントン病の症状も消えていたのだ。 しばらくお茶を飲みながら会話が続いたあと定子は、「あなた達だけで大事な話があるんでしょう」と言って席を外す。 定子が部屋を出ていった後、開口一番に優子言った。   「久し振りね、慶太、加奈子」 レイコが出てきた。   「本当にレイコさんなのね」加奈子が言うと   「加奈子、敬語は必要ない。レイコはタメなんだ」慶太が言った。   「その方が私もしゃべりやすいわ加奈子」   「でも実際は339歳でしょう。私達の先輩じゃない」   「何言ってんだよ加奈子、俺達の方が先に生まれてんだから俺達の方が先輩じゃないか」 複雑な関係に戸惑う加奈子。   「兎に角フランクにいきましょう、加奈子」   「確かにそうね。それに私達メトコスの仲間なんだし、ヨロシクねレイコ」 笑って応える身の代わり早い加奈子に慶太は驚く。   「それでどうだ、今の時代には慣れたか?」 慶太は素朴な質問をする。    「ハッキリ言って、この時代の事は知ってはいたけど、コレほどカルチャーショックを受けるとは思わなかったわ。」   「例えば?」   「わかりやすく言えば、あなた達が戦国時代や江戸時代に行って、腹切切腹、切り捨て御免を目の前で見てる感じかな」 レイコの比喩に妙に納得した加奈子が言う。   「私達は近代社会で生活して、民主主義を謳歌していると思っているけど、未来から見れば遅れた世界に生きてるって事ね」   「それはしょうがないさ、そうして人類は進歩するんだ」 慶太が言った。   「進歩ねえ。正しい進歩ならいいんだけど」 レイコが力なく言う。   「どういう意味だ。君から聴く未来は素晴らしい世界に見えるが、何が不満で、何が起きてるんだ。それをはっきり聞くまで俺達は、まだメトコスの一員になる事は出来ない」 慶太の言葉に強い意志をレイコは感じた。   「あなたが言いたいことは理解できるわ。でも此処では話せないし、私も体力が戻ってないから来週あなたの街へ行って話しましょう」   「ねえレイコ。あなたこの家を出るんでしょう。だったら私の家で一緒に暮らさない」と提案する加奈子。   「俺もその方がいいと思う。お母さんだって安心だろうし」 定子が幾らメトコスが使命を持って活動している事知ってるとしても、やはり優子は17歳の子供なのだ   「慶太の言う通りお母さんが心配してるし、何たって私はまだ17歳だからね。それに国籍はアメリカだし、お願いするわ加奈子」 その後は、定子を含め色々な話をした。 レイコが加奈子の部屋に引っ越すことも、たまに実家に足を運ぶことを条件に許しを得た。 メトコスの初顔合わせが終わった。 加奈子が言ったように第二章が始まるのだ。
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