未来からの使者

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未来からの使者

 今日も朝までやってしまったと、憂鬱な気分がワンルームの部屋中に充満する。 時計の針は6時を指している。と言う事は、6時間ぶっ続けで、テレビゲームをやってたことになる。  石川慶太19歳、三流の中でも三流と言われるF大学の1年生である。 学生の中に、四捨五入をいくら説明しても理解できない奴がいて、三流大学とは分かってはいたがここまで酷いものとは、と逆に感心した。 今日も講義には出るつもりはない。 このまま、夏休みに突入するだろう。   「何かしなくちゃイケないけれど、何をしたらいいのか分からない」 ラップ調に歌ってみたが、虚しくなってベッドに寝転んだ。 最近「もがく〜」が口癖になったと友人に言われる。 余りにもゲームに熱中したせいで、興奮しているのか中々寝付けない。 その時、スマホの電話が鳴き出した。 画面を見ると非通知だ。 今時、LINEじゃなくて電話とは誰だと思い、画面をタップした。   「もしもし、砂川慶太君ね」 若い女性の声だ。   「そうだけど、アンタ誰?」   「中川レイコ第6世代の19歳。正確には、339歳」   「意味わかんないんだけど」   「兎に角、聞いて頂戴。この電話の通話は5分後に自動的に切れるから」   「勝手に電話してきて何言ってんだ」   「ゴメンでも電話は切らないで。私の話を聴いで」   「分かったよ、それで俺に何のようだ」   「今から、私が言う6つの数字をメモして」   「どういう事だ」   「いいからメモして、言うよ」 乱暴なやつだなと思いながらも、粗末なテーブルの前に座り直し、ボールペンを握る。   「どうぞ」   「3 ・8 ・16 ・23 ・29  35・メモしてくれた」   「ああ、メモった」   「確認するわ、復唱して」 言われるままに、走り書きしたメモを復唱した。     「一体何の数字だ」   「コレ、明日発表されるロト6の当選番号よ」 ロト6とは、1 〜43の数字の中から無作為に6つの数字をチョイスし、当選番号と一致したら、一等2億円が獲得できる、要するに宝くじである。   「アンタ本気で言ってんのか?」   「騙されたと思って必ず買うのよ」   「おっと、急に俺の母さんみたな口調になったな。俺とタメなくせに。イヤ、339歳のお婆ちゃんだったな」   「兎に角買って。来週の水曜日に、また朝の6 時~7時のの間に電話するから」   「その前に君の電話番号を∼∼∼」 と言いかけた時に電話が切れた。   「もがく~」    暫くぼーっとなったが、ふと我に返った。   「新手の詐欺かな馬鹿らしい」 慶太は床に着くと眠りに入った。  翌日の午後11時前にコンビニのバイトが終わった慶太はアバートに帰宅した。 期限の切れたコンビニの弁当とペットボトルのお茶が晩飯だ。 あっという間に食べ終わると残ったお茶を流し込み一息つく。 そうだと言って、財布から一枚の紙を取り出す。 ロト6の投票券だ。 最初は買う気はなかったが、妙な気分になり 乗っかってやれと、買ってしまったのだ。 当選番号は既に発表されている筈だ。 スマホでサイトを開き、番号を確認する。 「6・11・19・26・32・38」   「全然違うじゃないか。かすってもいない200円返せレイコの野郎」 なんだか自分が惨めな気分になった。 毎日の満たされない現実が、ありえもしない詐欺にまんまと引っかかる自分が情けなくなっのだ。 テレビの電源を入れる。 ゲーム器に手を伸ばそうとした時、ふと気になってもう一度、投票券と当選番号を照合する。   「これは偶然なのか?」 慶太は、背中に凍りつくものを感じた。 次の水曜日には必ず電話が掛かってくると確信している。 ひょっとして、何かが始まるかも知れないと思った。
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