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未来からの予言
とうとう朝まで寝付けなかった慶太は、テーブルの上のスマホから目が離せない。
この一週間は、一年にも感じた。
既に6時が過ぎた。
スマホを手に取ると、ベッドに腰掛ける。
横になる訳にはいかない。
寝付いてしまう恐れがあるからだ。
その時スマホが鳴った。
前回同様、非通知だ。
「もしもし俺だ」
「慶太くん、電話取ってくれてありがとう。ひょっとして、もう出てくれないんじゃないかと心配したわ」
「出ないわけにはいかない。あんなもん見せられて」
「と言うことは、もう分かっているのね」
「ああ、どういう事だ。君が教えてくれた番号に3を足すと当選番号になる」
「流石ね。よく分かってくれたわ」
慶太は気になる事を聞いてみた。
「君たちはなにか大きな組織で活動しているのか。じゃなきゃこんな芸当はできない」
「確かに今のあなたならそう思うしかないよね」
「違うっていうのかい」
「確かに組織の人間ではあるけど、あなたは私が当選番号を細工できると思ってるでしょう」
「それしか考えられないじゃないか」
「他にもあるわ。私は既に知っていたのよ、過去のことだから」
「いい加減にしないと電話を切るぞ」
その気は全くないが脅してみた。
「それじゃあ信じてもらう為に教えてあげる。金曜日の日本時間で夜の8時35分に、エジプトで震度7.5の地震が起きるわ」
「本気で言ってるのか」
「勿論本気よ。スフィンクスの頭が崩れ落ちるから」
相手の意図が全く見えない。
そんな馬鹿げた話を早朝から俺にして何になるのか。
「本当にそうなったら俺は君の言うことを何でも聞くよ」
「あっ言っわね。約束よ」
「俺も男の末席に座っている。嘘はつかない」
「あら、あなた達の時代は、まだ男の癖にとか女だからとかが残ってた時代だったわね」
「ゴメン、そんなつもりで言った訳じゃないんだ」
「別に謝らなくてもいいわ」
「もしよかったら、メールで連絡を取れないかな、5分は余りにも短い」
「それは無理よ。文字はサーバーに残るから、後で面倒が起きるの」
「それじゃあもう1つだけ教えてくれ」
「早くして、あまり時間がないから」
「どうして、ロト6の番号を正確に教えてくれなかったのか。間際らしいことしなくても」
「19歳の若い君が、億のお金を手に入れたらろくな事にならないわ。それにあなたが、電話に出なくなるもの」
「そういうことか」
確かに大金が手に入れば、そうするな電話番号も変えただるう。
「今日の所はこの辺で終わりのようね。でも信じて慶太君。私が何故こんな事してるのか。それは、あなたとの信頼関係を築きたいの」
「だったら会って話をすればいいじゃないか」
「それが出来ないから、この方法でコミュニケーションをとってるのよ。兎に角、来週また話しましょう」
そこで電話が途絶えた。
慶太は、ベッドに横になる。
天井の染みを見ながら一息つく。
頭の整理ができないまま、眠りに落ちた。
金曜日の夜、バイトが終わって帰宅した。
早速テレビのスイッチを入れる。
ニュース番組にチャンネルを合わせるのは久し振りだ。
画面を見て腰が抜けそうになった。
エジプトで地震が起きていた。
多数の死傷者数が出ている模様だと伝えている。
驚いたのはスフィンクスの頭が落ちて、砕けている場面が繰り返し何度も放送されている。
「俺ひょっとして、とんでもない約束をしたのかもしれない」と慶太は思った。
しかし、張りのない生き方、先の見えない人生、やり場の無い感情を持って過ごしていた慶太は、なにか体の中に漲る物を感じていた。
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