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「……なんで凪君、料理教室?」
「覚えてないのか……」
明らかに肩を落とす凪君。
「飯事する度に『結婚するならパパみたいに料理出来る人じゃなきゃ嫌!』って言ってただろ?栞がその男と帰って来た時、『今日の料理は美味しかったです』って言ってたのが聞こえたんだ。栞が幸せなら、と思ったけど、俺にも出来ることがあるんじゃないかとーー」
「あれはお店の料理以外は嫌だったことを伝えた社交辞令。……ねぇ、凪君、私のこと好きなの?」
「……言わない」
真っ赤に染まった彼の耳が全てを物語っていた。
「言って欲しい、な。……あ、私、凪君に『隠し事』してた!」
「まだあるのか……」
「実は凪君以外に触るのも触られるのも無理なんだぁ、私……」
ぎゅっと凪君の腕に抱き着いた。
「……栞、飲み過ぎ」
「ごめんっ」
慌てて離れようとすると、グイっと引っ張られ今度はぎゅうっと抱き締められた。
「……蜆汁、後で作ってやるよ」
凪君は身体を離すと10年以上ぶりに私の目をハッキリと見て笑顔で言ったのだった。
【Fin】
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