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「……中学の時、栞の家で皿取ろうとして、わざとじゃないのに栞に触れた瞬間、俺のこと突き飛ばしただろ」
「アレはっ!」
恥ずかしくて真っ赤になりそうだったから……、とは言えずに黙ってしまう。
……いや、そうじゃない。
昨晩、咲に散々に指摘された、この可愛げのなさ。
(本当に嫌になる……)
そう思った瞬間、私の瞳からは涙がぽろぽろと溢れ落ちていた。
「な、凪君、け、結婚しちゃ嫌ぁ……」
彼のウィンドブレーカーを軽く握り、見上げる。
「――はぁ?」
眼鏡の奥の凪君の瞳が、私の脈絡のない醜態に驚いて見開いている。
この10年ちょっともの間、自分の気持ちをひたすら『隠し事』し続けた結果がコレだ。
凪君に全く気持ちが伝わってない。
「……栞。俺のこと好きなの?」
こくん、と頷く。
凪君は私の両肩を掴むと「……ちょっと待ってて」と言って、今来た道を戻ろうとした。
すると、奥から聞こえてくる綺麗な声。
「……先輩?急に走って一体どうしたんですか?その方は?」
視線をずらすと、凪君の向こう側に彼を捜しに来た超絶美人さんが驚いた顔をして、こちらをジッと見てその場に立っていた。
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