side Nagi …1…

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修士も卒業した今、俺も晴れて社会人となり、俺と栞は26歳になった。 社会人になれば学生の時以上に栞との接点は無くなる、と思っていた。 だが、しかし。 だがしかし、だ。 就職した今でもお互いが実家暮らしだった為、通勤するのに家を出る時間は然程(さほど)変わらず、大学時代よりも栞とは、はるかに顔を合わせることが多くなった。 いや。 多い、どころの話ではない。 ……毎日、だ。 まるで、高校時代のように毎日毎朝、顔を合わせる羽目になった。 「おはよう、凪君」 カタンと門扉を閉め、にっこりと微笑み掛ける栞。 元々、栞は幼い頃から可愛らしい顔立ちをしていたが、大人になり化粧をするようになってから、まるで(さなぎ)が蝶になるかのように綺麗になった。 ……俺の好み、そのもの、だ。 栞は俺の方へと駆け寄ってきた。 「……おはよ」 今日も今日とて栞に会う。 栞から視線を外し、カチャンと門扉を閉めながら思った。 (……高校時代より多くないか?学生の時と違って夏休みとか長期休暇が殆どねぇ……。勘弁してくれ……) 俺は栞が正直、苦手、だ。 間違えても嫌い、では無い。 苦手なのだ。 ただ、出来る限り避けたい相手であることには変わりなかった。
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