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side Nagi …2…
ピッーー。
「おはようございます」
社員証を出退勤カードリーダーにかざしていたら、背後から声を掛けられた。
振り向くと、隣の部署の後輩、滝玲香が立っている。
滝さんは社内でも『高嶺の花』扱いされる程の美人で、まるで女優やモデルのような人物だ。
「おはよ」
「……先輩、どうでした?」
滝さんも社員証をカードリーダにかざし興味津々に俺に問い掛けた。
「そうだな……」
俺は溜息を吐く。
「一つ良い事を教えましょうか?」
「何?」
「溜息は一つ吐く度に幸せが一つ逃げていくそうですよ?」
「……」
慌てて口を押えると、滝さんは美人度をMAXにして、にっこりと笑った。
「反応がとても素直ですね、先輩。……先週末、楽しかったです」
「……あ、いや、俺の方こそーー」
「今週はどうします?日曜は午前から空いてますけど……」
「え!?何ぃ?何が空いてるのー?オレも混ぜてよ!」
ガシッ!と、滝さん狙いの同期の原に肩を掴まれた。
「原先輩には関係無い話ですよ。ね?倉田先輩?」
「まぁ……」
「では、失礼します」
一礼して彼女は颯爽とその場を後にする。
(後でメールしますね)
原には聞こえない小声で、去り際に一言を俺の耳に残して……。
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