side Shiori …1…

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side Shiori …1…

「逃げた……」 慌てて階段を駆け下りていく凪君の後ろ姿を見て、私は呟いた。 凪君は私に『隠し事』をしている。 本人は私に気付かれないように周囲にも働きかけているがバレバレだ。 私が何年(そば)に居た、と思っているのだ。 凪君が私に隠し事をするなんて百年早い(……と思う)。 幼い頃から仲が良く一緒に過ごすことが多かった私達だが、先に身長が伸びて身体が大きくなった私と後から伸びた凪君の目線が同じ位になった頃から、彼は私と目を合わせなくなった。 私を視界から外すようになったのだ。 (思えば頑張ってきた、よなぁ……) 会社の最寄り駅に着き、地下鉄の改札階から地上へと出る階段を上っていく。 視線を上げたまま地上に出ると、高層ビルの谷間から青空が広がっているのが見えた。 外は快晴、だ――。 (どこが雨が降るの……) 実際の天気と凪君が言った天気の乖離が、まるで私と彼との距離を表しているかのようだ。 (凪君)に近付こうと私がどれ程血の滲む努力をしてきたのか、彼は絶対に知らない。 小学生の頃は良かった。 凪君の両親は共働きで、よく私の家に遊びに来ていた。 幼馴染として、遊び友達として、夜ご飯まで一緒に食べる仲で、いつもいつも一緒だった。
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