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中学時代に状況は一変する。
「もう栞の家でご飯、食べない」
彼はいきなり、そう告げた。
その時からだ。
彼が私と目を合わせなくなったのは……。
中3になり、志望校は県内で一番の進学校にする、と聞いた時の、あの悲壮感。
同じ学校に通いたくて、私は泣きながら必死に勉強した。
そして、何とか合格した。
しかし、高校時代も状況は変わらず、登校時に会うだけで、凪君はやはり私と目を合わせようともしなかった。
大学は超有名大学の理系学部に進む、と母親から聞いた時の、あの絶望感。
理系科目が壊滅的だった私は、努力してもどうにもならないことを、あの時、初めて悟った。
ただ、凪君の志望校が私立だった為、文系科目をひたすら頑張り、学部は違っても、辛うじて同じ大学に進学することが出来た。
学士課程で卒業せずに修士課程に進む、と聞いた時の、あの焦燥感。
凪君の学科は男子比率の非常に高かった為、同じ研究室内に女子はいない、と聞いて、ただ只管、安堵した。
そんな私のことを彼は知らないし、知ろうともしない。
「ここまで、なのかなぁ……」
晴天が目に染みる。
背後から「おはよ」と声を掛けられ、振り返ると同期の谷澤咲が立っていた。
咲は私を見るなり、ぎょっとした表情を浮かべる。
「栞、朝から何、泣きそうになってるの?」
「な、凪君が……」
「栞の幼馴染くん?」
コクンと頷く。
私は先週末、見てしまったのだ。
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