第一章

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茶の準備をしていると、山南が甘味を用意し小机へ置いた。 ありがとうございます。と櫻島が礼を言って顔を上げると、山南の目が見開くのを見た。 「どうかされましたか?」 「いや、三木さん…もしかして、土方君と寝たのかい?」 「随分と直球な事を言いますね」 山南が苦笑しながら自分の首を摩っている。その動作で櫻島は察し、自分の首元を触った。 「昨日君と別れた時には付いていなかったから、もしかしてと思いましてね」 「あー…未遂です。副長をよく存じていらっしゃる山南さんに言うのも何ですが、私から見たら恐らく手っ取り早く処理をしようと考えていたのでしょう」 「記録方らしい観察力ですね」 「恐縮です。あーあ…これ隊士の皆さんに見られたかもしれませんね。ますます屯所内が荒れそうだ」 襟巻きが懐かしい。櫻島は掛け衿を引っ張り、土方に付けられた痕を隠すように着直した。 この後、藤堂が来ることを想定し、三人分に分けた甘味と湯呑みを持って山南の机へ運ぶ。机に置く際、席に座った山南の顔を一瞥した櫻島は、胸の鼓動が一瞬跳ね上がったのを感じた。 いつも血色の悪い顔が赤くなっている。何を考えているんだろう。何を意識しているんだろう。その考えが脳内を占め、気付いたら身をかがみ山南の顔を覗き込んでいた。山南としっかり目が合っている。 「ど、どどど、どうしたんだい三木さん」 「このような事を言うのはおかしいかもしれませんが、貴方は可愛らしい」 「うえっ…へっ!!?み、三木さん何を言ってるんだ」 「なるほどなるほど。とても興味深い」 その時戸の外で『失礼します』という声と共に藤堂が入室し、目に入った光景を見て固まった。 「えっと、これは…流行りの?」 「ち、違いますよ藤堂君!」 山南が必死に弁解するが、それでは却って怪しまれてしまう。そう考えられないほど慌てているのだろう。それをとても愛しく思った櫻島はクスクスと笑った。 .
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