第一章

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「藤堂さん、正直どうです?とても可愛らしいと思いませんか?」 「激しく同意します」 「えっ、藤堂君まで何を言って」 櫻島は諦めろと言わんばかりにそっと山南の肩に手を置き、ゆっくり頷いた。 「藤堂さんとは美味い酒が飲めそうですね」 「今夜早速どうです?」 「いいですねぇ」 いつまでも揶揄うからか、山南はいじけ始めていた。 「山南さん機嫌を直してください。昨日頼まれた資料も出来上がってますから」 「別に機嫌悪くはないですが…」 「なら良かったです。一度土方さんにお茶を出してから資料を持ってきます」 そう言って櫻島は山南の部屋を後にした。 櫻島が去るや否や山南は盛大な溜息を吐き、両手で顔を覆っているのを藤堂は見逃さなかった。 お茶を煎れ直した急須を盆に乗せ、部屋へ運ぶ。本来の小姓の務めであるが、今向かう場所の事を考えると溜息が止まらない。どういう反応するのだろうかと考えるのも面倒臭くなった櫻島は、割り切って土方の部屋の戸を開けた。 「お茶をお持ちしました」 土方は驚いた表情で櫻島を見た。まさか昨日の件で来ないものかと考えていたのだろう。脇目も振らずに茶を注ぐ様を見て土方は拍子抜けをした。 「てっきり来ないかと」 「仕事をするのは当たり前ですよ。熱いので気を付けてください」 机に湯呑みを置いて立ち上がろうとした時、土方は櫻島の腕掴んだ。顔を上げると土方の熱の篭った眼差しが櫻島の双眸を捕らえた。 「俺は誰でもいいわけじゃない」 「昨日の女が気に入らなかったという事ですか?斎藤君が引っ叩かれたみたいでしたが」 「女の事じゃない、あんたのことだ。それに、斎藤には謝った」 土方が焦っている。先程見た山南とはまた違う必死さに笑いそうになる。まるで少年のような不器用な仕草。朝から脳内への情報入力が捗るなと櫻島は考えながら、この状況を楽しんでいた。 .
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