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「それで、昨日の問いの答えは?」
「俺は……あんたが、好きだ」
「うん、ありがとう。で?」
土方の表情が唖然とした表情になる。予想だにしなかった櫻島の返しに土方は頭が回らなかったようだ。
「吾輩を好いてるのは皆そうだ」
「ちげぇよ、俺はあんたが欲しいんだよ」
「それは聞いたぞ。それで契約したのだろう?」
ワシワシと頭を掻き毟る土方は、どうしたらうまく伝わるのだろうかと苦悶しているのだろう。あるいは、この自分に“恋慕”という言葉を出せないのか。
しかし櫻島は分かっていた。いやもう分かりきっている。だが“鬼の副長”の口から聞いてみたいものなのだ。
だから口の端を上げていやらしく笑い、土方を見下げた。数多の女性を虜にし、その耳元に囁いたであろう伝説(笑)の男の愛の囁きを待っていたのだ。
「流石のお主も、吾輩に言うのは難しいのだろうな?言葉って難しいねぇ〜?」
「お、お前…」
「いやね?わかるよ?吾輩は鈍感じゃないんだよ?君の名誉のために分からないフリをしてあげてんのよ?ま、言ったところで、その言葉を受け止めるつもりはないんだがね!」
次々と来る辛辣な言葉に土方は頭を殴られたかのような衝撃を受け、白目を向いて後ろへ倒れた。それを見届けた櫻島は、そっと土方の耳元に近付き囁いた。
「悪いね。吾輩にはやることがあるのだよ」
そして土方の額を叩いた。が、無反応である。気絶はしていないが放心状態になっているのだろう、相当櫻島の言葉が効いたようだった。
任務の事で尋ねるつもりだったが使い物にならないと判断した櫻島は、昨日の事件の書類を抱えて土方の部屋を出た。
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